コロナ禍、今、学校は

 東京などの感染急増が報道された7月15日は、府教委から学校閉鎖は考えていないとの発表もあった。校庭でスポーツテストをしていたり、遊んでいる子どもや先生たちを見ても、暑さ対策かマスク姿はほぼ見かけない。いつも通る一級河川の広い河川敷は、以前はどこからこんなに人が大勢出てきたのかと思うほど、連日高校生や大人たちがスポーツなどを楽しんでいたのだが、今ではほとんど見かけない。自宅近くの古墳公園も同様で、小テントを張って一日中過ごしている親子連れ等、のどかな風景が見られたのだが、今では人の姿はまばらだ。みんな一挙に広い自然の中から学校や会社の狭い空間に戻ったのかと思うと不思議な気がするし、風景を見ているだけでは今も経済的に困窮している人や病に苦しんでいる人たちがいることも、どこか遠くの世界だ。
 最近、小中の友人や保護者たち10人ほどから聞いた話を書き留めてみた。そして私の考えも挟んでまとめた。どこの学校も違うところはもちろんあるが、共通して言えることを一言で言えば、学校は矛盾だらけが日常化している。社会が、というか特に政治が、非論理ときには非倫理まるだしで動いているのだから、教育現場は翻弄される。しかし、あの小さな建物の中で忙しく日々追われていると、さまざまな矛盾に気づいても、それが常態化する毎日に、みな慣らされているかのようだ。

■コロナ対策
・ 消毒作業がすごく大変だった。レベル2だった初めは毎時間毎に各机の消毒作業。今はレベル1で子ども達が帰った放課後の1回になったが、すごく丁寧な学校と、ドアノブ等だけというところもあるようだ。
・ アルコールは手に入らず家庭用洗剤をうすめて拭き、その後水拭き。市教委にアルコールや他市で配っているところもあるフェイスシールドを頼んでも、「アルコールが手に入らない。フェイスシールドは手に入れている学校もあるので各学校で。足りている学校に配ってもムダだから」との返事。
・ 非接触型体温計を何とか予算を捻出して購入した学校が複数校あったが、しばらくして市教委は各校に3~4台ずつ配ってくれた。現場の要望が実ったと言うべきだが、なけなしの予算で買った学校にしてみれば複雑。市教委の担当者は「すでに購入した学校も足りているわけではないので配られて良かったでしょう」とうそぶいたとか。市教委にしてみれば、確実に買えるかどうかわからないから黙っていたのかもしれないが、現場感覚には乏しい人がいるようだ。
・ コロナの疑いのある生徒への対応指針を出してほしいという現場の声に、市教委担当者は「自分の仕事ではない」と言って断った。たしかに府教委からは「体調不良者への対応に関する留意点」という資料が出ているから、その人の仕事ではないのだろうが、現場の声に対処する姿勢か疑問。

■時数
・ 4月には授業時間にはこだわらないと言っていた市教委だったが、他市が「第2波が来たら困るから授業時数を減らして良いと言えない」と言ったのが伝わると、本市でも年間授業時数を確保すべしと方針が変わった。そのため行事をなくし、7月20日の終業式翌日から7月末まで小3、4年生は2時間、5、6年生は4時間授業となる。給食はない。夏休みは全市的に2週間。中学では9月からは7時間目授業を行う。学校によってはすでに週3回7時間目をしている学校もある。しかも今後逼迫してきたら土曜授業もありうる。生徒も負担だが、教師が病欠になっても、もう代わりは来てくれないという空気が強まっている。

■行事
・ 早々と修学旅行中止にした市もあるが、中核市でもあるわが市教委は「中止というスタンスはとらない」としつつ、しかし「旅行先で熱が出て帰ってきて陽性という結果が出たらどうするのか? 学校がコロナを広めたと言われるが誰が責任をとるのか? 校長は責任をとる覚悟はあるのか?」「離島はダメ。離島で感染症の病状が出たら困る」などと言ったそうで、他にも「新幹線やバスは換気が良いから大丈夫。飛行機はダメ」などという根拠がわからない話も市担当者から伝わってくる。
・ 校長の中には早々と中止を決めたり、行き先を修学旅行には似つかわしくない近隣の施設で子どもたちを2泊させる等という残念な内容に変更する学校もある(沖縄平和学習を好まない人達には好評なようだ)が、多くの中学校では継続審議中。
・ 修学旅行は、一人でも直前に発病したら中止でいいのか? キャンセル料は保護者負担か? 発病した子が恨まれたり苦しむことはないか? などの心配は尽きない(感染者が出た場合の対応を含めた保険を組めばいいのだが、GoToキャンペーンのお金はこういう場合の補償にしてほしい)。

■学習面
・ 放課後子どもたちに補修をしたりするのだが塾の子は帰る。残る子は塾に行けない子? 時間はとられるが効果は疑問。
・ 自主編成の経験がなく、内容精選のイメージが無い先生も多くいる。文科省が家庭学習も評価対象にしてよいとしたことにより、プリントを渡しただけでテストもできると安堵している先生もいるくらい。
・ 水泳学習は全市で7月は無し。更衣室の消毒や過密が問題だが、どこも健康診断が遅れているので、多くの学校はプールは8月から9月初めまでを予定。小学校1年生は健診が間に合わず今年は各校ともプール無し。また、心臓の二次健診は10月にならなければ受けられず、その上「保護者が自費で医院で検診させた結果は認められない」という市教委担当者(学習保障はどうなっているのか)。
・ 中学の部活は水泳部などを除いて始まった。校長会が部活のガイドラインを市教委に要望したのになかなか作らないので他市の資料を渡したら一週間後に作ってくれた(学校再開時には指針が出ていた市もある)。

■子どもたちの生活
・ 6/15から通常授業と給食が始まり、教室はエアコンをつけ窓は開けている。休み時間に抱きついたりする子や支援在籍の子でマスクをつけられない子に対する周囲の子の目が気になったりする。注意は難しい。
・ 音楽や英語ではマスクして少し歌うが、リコーダーはダメ。昼食は個々で食べているが、黙って食べさせている学校もあると聞く。普通におしゃべりしながら食べているクラスもある。
・ 長い休み時間後に手洗いを皆している。体育ではマスクを外して子どもは自分の袋に入れる。3密を避けたりマスク着用は徹底はできず、教師も諦めムード。マスクで疑似熱中症になつた子がいた。40人クラス保護者からは過密で心配の声が出ている。
・ エアコンは普通教室しか無いので、授業はほぼ教室。実験を理科室でおこなったりする学校もあるが、専科が教室をまわっている。実験は教師がみせてすませている。
・ 図書室は椅子を無くしクラス半分ずつで本を選ぶだけ。カウンターにはビニールの仕切り設置。本の消毒ができないため、返却本は学校図書館協議会のガイドラインどおり72時間は貸し出ししていない。市からは基準が出ていないので学校によって対応はバラバラ。72時間で充分かも不明。
・ 子どもたちの登校しぶりとか、先生にあまえる子が増えたかもしれない。廊下を徘徊をする子が増えた気がする。登校していても家庭的にしんどい子達のケアーも微妙に思う。イレギュラーなことが多くて不安になっている保護者もいる。期末テストを欠席した中1年生が例年になく多かったのは自宅待機の影響かと思った。

■勤務面
・ 3月4月はどうやって働けば良いのか皆悩んだ。毎日出勤すべしと管理職にはいわれたが、感染の不安を感じた。ポスティングの他、公園で子どもが遊んでいるという苦情が来ているのでと、見回りに行くように言われたりもした。
・ 閉鎖中は動画配信を管理職にいわれたが、対応できない家庭の子への対応は、「分割登校の日に残して教えれば良い」と言われた。いきなり小1の最初から残り勉強でいいのかと思った。とにかく配信が先だったが、ネットだけに頼るのはどうかと疑問。
・ 健康診断ができないためかコロナを恐れてか、あらかじめわかっていた産休講師も派遣されていない所があるし、いじめ対策委員達の派遣を学校から要請しても、コロナのせいか行けないと断られ、現場は見捨てられたと不信感と諦めは募った。
・ 会議の量はさほど変わらないが、職員室でいじめの研修や伝達講習の報告もあったり、ネットの使い方の研修もあった。コロナ対策や行事の職員会議などは多い。
・ 誰もが同じように単元を精選した授業ができるようにと、毎日デジタル教材作りを深夜遅くまで作業している学年もある。各教室にPCやプロジェクターがあるので、皆同じ画像を見せようというのだ。

■大阪府チャレンジテスト
・ 2015年から府のチャレンジテストが始まり(今年度予算3億3820万円)、その結果は府全体の平均と比較され、各学校の内申書の評定平均が府教委に決定され、各校は作成する内申書の評定を枠づけられてしまう。今回6月予定の中3チャレンジテストは中止されたが、なんと中2年で受けた結果を3年生の内申に反映させよとムチャクチャの指示。

□ まとめ ————————————–
 今後はいつ突然休校になるかもしれない。集まった子どもたちの履修経験が違っていても、誰とでも楽しく勉強できる関係を築けるのかが、そもそも学校に問われている。図らずとも体験した少人数学級の良さ、バーチャルではない授業の良さを活かした学校作りが求められているではないかと思う。M

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